白州の水を育む森づくり
2016.7.28
こんにちは、「シングルモルトウイスキー白州」の魅力を伝えるお手伝いをしているライターの中島です。
さて、「シングルモルトウイスキー白州」をつくるためには、水がとても大切だという話を『白州の味わいをつくる、天然水の源流を訪ねる』の回で、紹介させていただきました。そして水を育むには、森がとても重要だということもご理解いただけたと思います。ただ、すべての森がなにも手を加えず自然のままにしておくだけで、健全な姿を保っていられる、ということではないようです。
サントリーでは、良質な水を50年後、100年後も受け継いでいけるよう、水を育む森を守る活動を行っています。今回は、その森を守る活動を取材しました!

中央の扇状地にあるのが白州蒸溜所です。山々と深い森に囲まれているのがわかります。

花崗岩の上を流れる清水。少しの濁りもありません。

地下から湧き出した清水が沢となって豊かな流れを生み出しています。

100年後を見据えた「天然水の森」活動
「シングルモルトウイスキー白州」に限らず、サントリーの商品づくりは水に支えられています。そこで、サントリーでは白州蒸溜所を始め、全国の水工場やビール工場などで使用する水を育む森を「天然水の森」と名付け、豊かな水を生み出す森を育てる活動に取り組んでいます。2009年には、国内自社工場で汲み上げる地下水量を育むために必要な森林面積を7,000haとして目標を設定し、2011年にはその目標を超えました。さらに2013年には、サントリーが必要としている水だけでなく、より広く社会に貢献していくために、2020年までに12,000haに拡大する新たな目標を掲げたのです。これは、2020年時点での国内の自社工場が汲み上げる水の量を育む面積の2倍に相当します。2015年現在、「天然水の森」は全国に18カ所、面積は約8000haに及ぶまでになりました。
そのうちのひとつ、白州蒸溜所の背後に広がっているのが「天然水の森 南アルプス」です。北杜市をはじめとする約180haの森で、2008年から水を育む森づくりの活動を行っています。
「天然水の森 南アルプス」が位置しているのは、甲斐駒ケ岳を中心とする花崗岩でできた南アルプス山麓の中腹。山に分け入ると、山肌のいたるところで清水が湧き出て、白い筋となって流れています。その筋がいくつも集まり、沢となって流れ、水際にはサワグルミやトチノキ、カエデ類が茂り、生命力に満ち溢れた森を形成しているのです。
ただ、この非常に豊かな森も、いくつかの問題点があるそうです。その問題点を発見し、森を健全な状態で次世代につなげるため、様々な分野の専門家とともに調査・研究・活動を行っているのが、サントリーエコ戦略部水源涵養グループです。「天然水の森 南アルプス」における活動について、水源涵養グループの鈴木健氏に話を聞きました。

「天然水の森 南アルプス」。豊かな森の地下深くに良質な水が流れています。

森の回復を促進する、階段工とヤシネット。

シカの食害を防ぐための柵。

森が健やかな姿を保つための手助けをする
「豊かな水を育むいい森とは、良質な土壌があり、その結果十分に水を蓄え、地下深くに水を運ぶことができる森のこと」と、鈴木氏は言います。
「降り注いだ雨や雪は大地に染み込み、数十年という長い時間をかけて地中を旅します。その間に、幾重にも重なった地層に濾過され、ミネラルを含みながら良質な水は生まれるのです。
特に「天然水の森 南アルプス」は、水の浸透能が高い花崗岩の上に形成されているため、不純物を徹底的に除去して水を磨いてくれます。この時なによりも大切なのは、水がゆっくりと地下に染み込むこと。
そのために必要なのが、森の地面に積もったふかふかの土なのです。花崗岩の岩盤の上にふかふかの土がなければ、雨や雪は地下に染み込みにくく地表を流れてしまいます。水が花崗岩に染み込むまで、じっくりと保水してくれる土はおいしい水を育む上で必要不可欠なのです」
ところが、花崗岩は非常にもろいため、例えば大雨や台風といった災害を受けると、地表を覆った植生ごと崩落してしまうことも少なくありません。「天然水の森 南アルプス」にも時折山肌に見られる白い部分は、まさにこの崩落によって花崗岩がむき出しになっている状態。こうなると土砂の流出はとまらず、森が本来持っている水を蓄える力も衰えてしまいます。
「大きく表土が失われてしまった場所には、階段工を設置します。急斜面に階段上の段差をつくることで、それ以上の土砂の流出を防ぐのです。また、むき出しになった花崗岩の表面には、数年後には土に返るヤシ材で作ったネットを敷き詰めます。こうすると、草木の種子が根付きやすくなり、森の再生を促進できるのです。ここ6年で階段工とヤシネットは、確かな成果を生んでいます」
また、土砂の流出以外にも、鈴木氏の頭を悩ます問題があるといいます。それが、増えすぎた鹿による食害です。
「せっかく草木が新しく芽吹いても、新芽はすべて鹿に食べられてしまいます。この辺りに残るのは、鹿が食べないオオバアサガラだけ。ほかは、本当にすっかり食べ尽くしてしまうんです。これでは、木々の世代交代が進まず、森全体が高齢化してしまいます。今は地道に新芽をネットで囲むくらいしかできませんが、根本的な対策を考えなければいけません」
ただ、すべての森に手を加えているわけではありません。森を見守るか、それとも処置をするのか、判断することが大切なのだそうです。
「森が自然のあるがままに任せて健全な姿を保てるなら、それが理想です。まずは、もし森をそのまま放置した場合と、手を加えた場合のそれぞれの将来の姿を予測し、どちらが理想的な森に近いかを考える事が重要。
もし、手を加えなければ森の将来が間違った方向に行ってしまうと思った時にだけ、少しだけ手助けする程度です。大切なのは50年、100年先のビジョンを明確に持って活動すること。多様な樹木や植物、生物がバランスよく共生する森をつくること、そうすれば自然といい土壌が生まれ、豊かな水も次世代にもたらされるでしょう」

美しい「天然水の森 南アルプス」があってこそ、「シングルモルトウイスキー白州」は生まれます。

天然水の森とシングルモルトウイスキー白州
自然は必ずしも無限ではなく、人間の手助けがなければ弱り、いつか果ててしまう可能性もあることが鈴木氏の話で実感できました。今、森を守ることは数十年後の水を守ること。すなわち、未来の命を守ることなのです。
私たちが普段愉しんでいる「シングルモルトウイスキー白州」も、こうした森を守る活動があって、高い品質を守ることができているんですね。自然と人が助けあい、支えあい、そして長い年月を経てしか生まれることのない良質な水。そして、その水でしか育まれることのできない「シングルモルトウイスキー白州」。そんなふうに考えると、白州と、そのマザーウォーターを育む森がより身近に、より愛おしく感じられるようになりました。

ライター:中島亮

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