白州の味と香りを生み出す、森の蒸溜所
~樽づくり~
2016.1.28
昨年は白州のウイスキーづくりの工程について、「仕込み・発酵」と「蒸溜」をテーマにご紹介しました。続いて今回は、白州の味わいと香りを支える「樽づくり」について、白州蒸溜所の安部 修(あべ おさむ)さんにお話を伺いました。

安部さんの案内で製樽工場を見学しました。

工場が位置するのは白州の森の中。

ずらりと並んで出番を待つ新樽。

白州の森で樽づくりを行う理由
白州の製樽工場は、蒸溜所のすぐそば、自然豊かな白州の森の中にあります。世界的に見ると、メーカーが樽工場を持っているのは珍しいことだとか。
「長い時間をかけて原酒を抱く樽の個性は、ウイスキーの味わいや香りに大きく影響します。そのため、樽づくりも白州の自然と気候を生かしたウイスキーづくりの一環と考え、自社の貯蔵部門で樽づくりを行っているんです。」
自社工場を持つことで、貯蔵部門やブレンダー室が希望する樽の詳細なオーダーに、柔軟に対応することができるのだそうです。それでは白州でつくられる樽にはどんな特長があるのでしょう?
「白州の冷涼な気候に合った小さめの樽を製造しています。メインとなるのは、ホワイトオークを使った容量230リットルのホッグスヘッドです。大きい樽を使うと穏やかに熟成が進んで重厚な味わいのウイスキーに仕上がりますが、小さめの樽を使用することで、白州特有の爽やかな味わいにつながるのです」
白州の爽やかさには、樽の大きさも関係していたのですね。さらに樽の材質や使用した回数なども、原酒の個性に影響してくるとか。
「新樽など、若い樽を使うほど原酒の色も香りも濃くなり、樽の個性が出やすくなります。そのため長期熟成したい原酒には、熟成がじっくり穏やかに進む古樽を使用することが多いです。他にも貯蔵庫内の配置場所などによってできあがるウイスキーの味わいは違ってくるんですよ」

隙間が生じないように側板を並べ、樽の胴体部分を組み立てます。

並べた側板に緩みがないか叩いてチェック。

職人さん各々が自分用の道具を持っています。

長年培ってきた五感を頼りに、
フープの締まり具合を確認します。

焼いた材木の角を切り落とすと、鏡板に。​

人の手による丁寧な樽づくり
安部さんの案内で製樽工場に足を踏み入れると、驚いたことに白州の樽づくりは、ほとんどが職人さんの手作業で進められていました。
「力が必要なところには機械を活用しつつも、基本はこの40年変わらずに手作業です。樽づくりにマニュアルはありません。樽の胴体部分をつくる作業では、大きさも幅も異なる側板(がわいた)を自分の勘で組み立て、それをまとめるフープの締まり具合も叩いた音でチェックします。樽の材料を見分けたり、材質の香りを嗅ぎ分けるなど、樽づくりは職人の五感に頼るところが大きいのです」
側板を隙間なく組み立てる複雑なパズルのような作業を、職人さんはものの10分ほどで手早く仕上げていきます。フープの締まり具合を確認する、カンカンという木槌の音は周囲に力強く響きますが、微妙な音の高さを聞き分けるのは素人にはとても難しく感じました。
続いては、鏡板を焼くダイナミックな作業現場へ。材木の上に円形の鉄枠が並び、その枠の中へ、職人さんがガスバーナーの青い炎を勢いよく吹きつけていきます。見る間に材木の表面が焼け焦げて、枠を外すと真っ黒な丸が出現。縁を切り落として丸い鏡板に仕上げるのですが、このバーナーでの焼き加減が、白州の香りに影響してくるのだそう。
「鏡板を焼くと生木の香りが消え、香味成分が出てくるんです。強く焦がすほど甘い香りになるので、つくりたい原酒の個性に合わせて焼き加減も調節しています。ここでは、アリゲーター・チャーと呼ばれる最も強い焼き方をすることが多いですね」
どの作業工程を見ても、職人さんの経験と五感が重要であることは明らか。30年近く製樽工場を担当している安部さんは、その使命についてこう語ります。
「組み立てをはじめ、樽の漏れ修理や機械の刃物交換など、熟練の感覚が必要になる作業は多岐にわたり、一朝一夕には白州の樽職人は育ちません。白州の森の中で時間をかけてウイスキーを育てるとともに、経験を積んだ一人前の樽職人を育成していくことも、私たちの役目なのです」

小淵沢駅売店で見つけたおつまみと共に白州を愉しみます。

インタビューを終えて
安部さんおすすめの白州の飲み方はロックと聞いて、さっそく試してみました。グラスを揺らすと、ほんのり立ち上る甘い香り。熱気あふれる鏡板の焦がしシーンが目に浮かびます。口に含めばまろやかで重厚な味わいが広がり、そこに職人さんたちの五感や経験に裏打ちされた、樽づくりの奥深さが感じられました。
「樽はウイスキーのゆりかご」といいますが、ゆりかごと原酒の相性がよくなければ、原酒の個性は伸びません。原酒を見ながら、それに合わせたゆりかごを丁寧に手づくりする。貯蔵部門のチームワークと熟練の職人技が、白州の味わいと香りを支えているのだと実感しました。

ライター:加藤愛

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