白州の味と香りを生み出す、森の蒸溜所
~蒸溜~
2015.12.15
11月には、白州のウイスキーづくりにおける「仕込み」と「発酵」についてお伝えしました。(「仕込み」と「発酵」についての記事はこちらから>>)今回のテーマは「蒸溜」です。もろみを蒸溜して、無色透明のウイスキー「ニューポット」へと姿を変える瞬間です。お話を伺うのは、「仕込み」「発酵」に引き続き、白州蒸溜所製造技師長の後藤直樹さん。「蒸溜は非常に手がかかる、子育てにも似た作業」と語るその真意とは?

白州の森がもたらしてくれる恵みについて語る後藤さん。

シングルモルトウイスキー白州を育む大自然。

ウイスキーづくりは自然と上手に付き合う
ことが大事だという。

蒸溜工程でも森の乳酸菌が恩恵をもたらす
発酵の終わったもろみをポットスチルと呼ばれる蒸溜器に入れて蒸溜し、アルコール濃度を高めるのが「蒸溜」の目的です。蒸溜回数は2回。1回目を初溜、2回目を再溜と呼びますが、それぞれ役割が異なるそうです。
「初溜の主目的はもろみの中のアルコール分をしっかり回収すること。それに、ウイスキーの味や香りに影響する香味成分を凝縮させ抽出することですね。ポットスチルを1000℃以上の火で加熱し、5時間ほどかけて蒸溜します。アルコールの沸点は約80℃と水よりも低いので、発生した蒸気を冷却して液体化させればアルコールや香味成分などの揮発成分だけを取り出せるというわけです」
1000℃以上という高温にはびっくりですが、実は加熱方法にも白州ならではのこだわりがあるそうです。
「ポットスチルの温め方には、炎を直接当てる直火加熱と、蒸気を通した管をポットスチルのまわりに配して温める間接加熱の2種類があります。現在は間接加熱が主流ですが、白州では初溜にあえて直火加熱を採用しています。もろみが直接加熱され、香りがより立ちあがる効果を狙っているわけです。蒸溜所見学の途中でトーストのような香りを感じられるかもしれませんが、これは直火加熱ならではのものですよ」
炎の当て方ひとつで個性が左右されるなんて、ウイスキーづくりは本当に奥が深い!
また、ここで重要になってくるのが、「発酵」の工程で登場した森の乳酸菌なのだとか。
「発酵の工程では、木桶に棲みついた森の乳酸菌によってもろみに乳酸が生成されるとお伝えしました。この乳酸が蒸溜中にも作用して、我々がほしい白州らしい香味成分だけが蒸溜液に残る手助けをしてくれるのです。白州の森がもたらしてくれる恵みは、こんなところでも役に立っているのです」

正面にある細長い窓から、人の目で泡立ち具合を確認します。

ニューポットの味を左右する泡をコントロール
初溜については、さらにサントリーならではの独特な考え方が反映されているそうです。キーワードになるのは「泡」。
「もろみの中には、発酵中に溶け込んだ炭酸ガスが含まれています。蒸溜をはじめると、この炭酸ガスが作用して非常に泡立つんです。スコットランドなどの蒸溜所では火加減を調整したりして、泡を立てずに蒸溜しますが、わたしたちのウイスキーづくりはまったく逆。泡を立てる蒸溜方法にこだわっています」
あえて泡を立てる理由とは?
「泡から生まれる部分にも、味わいや香りを左右する要素が多く含まれていると考えているわけです。泡を立てずに蒸溜すると、シャープでライトな酒になる。泡を立てることでしっかりとしたリッチな酒になります。白州の味を生み出すには、どうしても泡からしか得られない要素が必要。ですから、手はかかりますが、泡を立てて蒸溜するわけです」
泡の立ち具合はどのようにコントロールするのですか?
「泡を立たせるといっても、泡が上がりすぎてポットスチルの上まで達してしまってはいけません。ちょうどいい具合になるよう火加減を絶えず調整する必要があります。もちろん、蓄積したデータによって自動化されてはいるのですが、最後に頼りになるのはやはり人の目。ポットスチルの覗き窓から泡の状態を確認し、火加減を調整します。泡の高さは瞬時に変わるので目が離せません。やはり機械任せでは、我々の求める白州の味は生み出せない。最後に頼りになるのは人なんです。手間を惜しんではいいウイスキーはつくれません」

さまざまな形のポットスチルは、まるで工芸品のように美しい。

3段階の再溜を経てニューポットが誕生
初溜が終わった時点でできる初溜液のアルコール度数は22~23%。これをもう一度蒸溜し、さらにアルコール度数を高める工程が再溜です。
「再溜の工程は前溜、本溜、後溜の3段階に別れます。このうち、本溜で得られるアルコール度数70~72%の蒸溜液だけがニューポットと呼ばれ、その後の熟成過程にまわされるのです」
こうしてできあがったニューポットは無色透明。若く荒々しくはありますが、すでに白州の個性を携えているといいます。
「ニューポットの段階で滑らかで繊細でクリアな味を感じられます。例えば、山崎のニューポットとは明らかに個性が違う。白州の自然であったり、仕込みに使う天然水であったり、作り手のこだわりと手間を惜しまぬ作業といった要素が、白州ならではの個性を生み出すのでしょう」
そうした異なるニュアンスのニューポットをつくるにはポットスチルの形状も重要。
「蒸溜所を見てもらうと、大きさも形も異なるニューポットが並んでいるのがお分かりいただけるでしょう。白州蒸溜所には5種類16基のポットスチルがあります。同じもろみを同じ条件で蒸溜しても、ポットスチルの形状によってニューポットの味わいはまったく異なるものになります。それぞれの形状に、こういうニューポットをつくりたい、という我々の思想が反映されているのです。どのニューポットが欠けても白州はつくれません」
インタビューを終えて
ポットスチルの火加減を調節し、泡立ちの具合を見極め、ポットスチルの形状の違いを含めてニュアンスの異なるニューポットをつくり分ける。蒸溜はとても手のかかる工程のようです。後藤さんも「蒸溜はほかの工程よりも人の手が介在する比率が高いかもしれません。蒸溜には5時間ほどかかりますが、まったく気が抜けないんです。やんちゃな子供の面倒を見るようなものでしょうか」とおっしゃっていました。
手がかかるからこそ可愛いのは、人間もウイスキーも同じ。少しやんちゃなニューポットが穏やかな大人へと成長するのは、次なる工程「熟成」を経た後。そのことについては、また次の機会にご紹介します。どうぞお愉しみに。

ライター:中島亮

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