白州の味と香りを生み出す、森の蒸溜所
~仕込み・発酵~
2015.11.30
以前、白州蒸溜所の新河さんにお話を伺い、シングルモルトウイスキー白州の味を生み出すのに、白州の森、さらにそこに湧き出す水がいかに大切かを紹介しました。(白州の森についての記事はこちらから>>)今回はもう一歩踏み込んで、実際のウイスキーづくりの工程で、白州の自然と水がどのように生かされ、できあがる白州の味にどう影響しているのかを探ります。まずはウイスキーづくりの第一段階である「仕込み」と「発酵」について。お話を伺ったのは、白州蒸溜所製造技師長の後藤直樹さんです。

白州は、広大な森に囲まれた全国でも有数の名水の地。

直径9mの仕込み槽は24時間フル稼働。

白州の豊かな自然が独自の香味を育みます。

白州の天然水が大麦の味を引き出す
ウイスキーの定義は一般的に「穀物を原料として糖化、発酵の後に蒸溜をおこない、木製の樽で貯蔵熟成させてできる酒」といったもの。この、最初に行われる糖化という作業が、仕込みのことです。
まず、原料の大麦を発芽させた麦芽(モルト)を粉砕し、仕込み水と一緒に仕込み槽に入れてお粥状態にします。ここで麦芽中の酵素が働き、でんぷんを糖分に変えてくれるのです。これをろ過して糖分がたっぷり含まれた麦汁を抽出するまでが仕込みと言われている作業。粉砕された麦芽は、仕込み水と一緒に直径9mの仕込み槽の中へ。もちろん白州の仕込みに使われるのは、白州に湧き出す天然水。ここで使う水の違いが、できあがるウイスキーの味に大きな影響を与えるそうです。
「山崎と白州で使っている仕込み水は同じ軟水に分類されますが、白州の方が硬度が低く味わいも異なる。大麦そのものが持っている味わい、香ばしさや甘みをより引き出しやすい水と言えるでしょう。

「仕込み工程の段階から白州の特長である清涼な味づくりは始まっているんですよ」と後藤さん。

仕込み工程から白州の清涼な味づくりは始まっている
酵素の働きがもっとも活性化する温度に温められた仕込み水の中で麦芽が撹拌され、糖化の工程は終了。その後のろ過工程は、長い時間をかけて行うのだとか。
「麦汁とは、ろ過を経てできあがる液体のこと。我々は、この麦汁をいかにクリアにするか、『清澄麦汁』にするかにこだわっています。じっくり時間をかけてろ過した麦汁は、文字通り清く澄んで透明。口にすればまず甘さを感じ、その後に紅茶のような風味と麦汁の旨味が追いかけてきます。これでなくては、いいウイスキーは生まれません。クリアな清澄麦汁に磨き上げることが、白州の清涼な味わいにつながっているのです」
こうしてできあがった麦汁には、すでにシングルモルトウイスキー白州の個性も表れていると言います。
「私は20年間、山崎蒸溜所でも働いていたので、山崎の麦汁もよく知っています。山崎はまったりとしていて重厚、白州は滑らかですっきりとした口当たりでシャープな印象。この段階で白州の特長を感じられるのは、やはり仕込み水の影響が大きいのでしょうね」

木桶の中でできあがるもろみは約7%のアルコール濃度。発酵が進むとブクブクと泡が飛び跳ねます。

白州の森の乳酸菌が棲みつく木桶。

白州蒸溜所ではウイスキーづくりの工程を見学できます。

もろみの味の決め手は、森の乳酸菌
続いて、仕込みでつくった麦汁を発酵させる工程です。麦汁に酵母を加え、アルコールと炭酸ガスへ変えていきます。発酵条件によってウイスキー特有の香味成分が左右される、非常に大切な工程です。温度管理のことだけ考えればステンレスの桶の方が有利。ただ、白州蒸溜所では、あえて18基すべての発酵槽に木桶を使っているのが特長です。
「木桶はメンテナンスさえすれば何十年と保てるのですが、一方でやはり腐食や微生物の関与といったリスクもつきまといます。それでも木桶を使う大きな理由は、森の乳酸菌が木桶に棲みついてくれるからです。酵母は糖分を食べてアルコールを生み出すわけですが、食べられる糖の種類には限りがあるのです。乳酸菌は酵母が食べられない糖を食べて乳酸を生み出してくれる。これによって、できあがるもろみにはさわやかな酸味と華やかな香りがつくのです」
白州の森に育まれた乳酸菌が、ウイスキーの味に影響するなんて、なんとも神秘的。ここでも、やはり白州の自然環境なくして白州の味は生まれないということが分かります。
「発酵が終了するまでの期間は、我々にできることはほとんどありません。仕込み工程を経てできあがった麦汁は60~70℃くらい。そのままでは酵母が活動できないので冷ましてから発酵槽へ移しますが、その時に酵母が活動しやすいよう、夏なら約25℃、冬なら約20℃に調整するくらい。あとは白州の自然にお任せするしかないんです。夏でも冷涼なうえ、森の乳酸菌まで力を貸してくれる豊かな自然環境があるからこそ、白州は白州たりえるといっていいでしょう」
後藤さんにお話を伺った後、実際に「仕込み」と「発酵」の作業現場を特別に案内していただきました。発酵槽を覗き込み、ぷくぷくと泡を立てながら発酵するもろみを見る後藤さんの姿は、まるで我が子を慈しむよう。35年以上もウイスキーづくり一筋に仕事をしてこられた後藤さんにとって、ウイスキーはわが子同然なのかもしれません。
「いやあ、何年たっても試行錯誤の連続ですよ。どの工程でも、数値的な絶対の正解なんてないから悩むことも多い。ただ、だからこそウイスキーづくりは楽しいし、やめられないんですけどね」
インタビューを終えて
いかがでしたでしょうか。ウイスキーづくりのうち、「仕込み」と「発酵」の工程について少し詳しくお伝えしました。この後に蒸溜、熟成、ブレンドという工程を経るわけですが、この時点で白州の豊かな自然が、白州ならではの味わいの基礎をつくり出しているのがおわかりいただけたかと思います。
仕込み水として使われる白州の天然水はすっきり爽やかな麦汁を生み出し、森に棲みつく乳酸菌は華やかな香りや味わいを生み出しています。さらに、そこに熟練の職人の経験が加わり、シングルモルトウイスキー白州は完成します。自然の力と人の知恵が組み合わさって生み出される白州に、さらに愛着が湧きました。

ライター:中島亮

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